【第47回Jウエルネス研究セミナー レポート】 ルナルナオフィスが拓く「働く女性の健康」と健康経営の新フロンティア

【第47回Jウエルネス研究セミナー レポート】 ルナルナオフィスが拓く「働く女性の健康」と健康経営の新フロンティア
(講師 株式会社LIFEM取締役 平野祐氏)
■概要
第47回Jウエルネス研究セミナーは、ウィメンズヘルスケアサービス「ルナルナ」で知られるエムティーアイグループと丸紅の合弁会社・株式会社LIFEM取締役 平野祐氏を迎え、「働く女性の健康課題」と企業・社会の関わりを深く掘り下げる時間となった。
■背景
地域医療連携からフェムテックへ 平野氏のバックグラウンド
平野氏は、新卒で地域医療連携のコンサルティングに従事し、佐渡島や陸前高田周辺などで地域の医療情報共有に携わってきた。その後、ヘルスケア新規事業、趣味教室×認知症予防の事業などを経て、エムティーアイグループに参画。「ルナルナ」やオンライン診療・健康相談などの基盤を活かし、2022年に設立された株式会社LIMEMで、法人向けフェムテックサービス「ルナルナ オフィス」を立ち上げ推進している。
女性ホルモンの大きな波と「3.4兆円」の社会損失
講演の前半では、なぜ今「女性の健康課題」がこれほど注目されるのかが整理された。
- 男性ホルモン:思春期以降ゆるやかに上がり、加齢とともに徐々に低下
- 女性ホルモン:思春期に急増し、月経サイクルで上下を繰り返し、閉経期に急激に低下
この大きな波にともなって、
月経痛/PMS、不妊・妊娠合併症、更年期症状、そしてその先の骨粗しょう症などが、ライフステージごとに次々と現れる。
とくに就労期の女性では、
- 月経:毎月数日、パフォーマンスが「半分以下」と感じる人が約半数
- 不妊治療:突発的な通院でキャリアや雇用形態に影響
- 更年期:キャリアピークの年代と重なり、「急に自信を失う」ケースも多い
これらを経産省の試算に当てはめると、女性特有の健康課題による社会損失は3.4兆円。男性更年期も含めると4.6兆円にのぼるとされる。
■講演要点① なぜ解決されないのか ―婦人科にたどり着けない8割の女性
では、なぜこれほどの損失が放置されてきたのか。
ライフェムが企業で行った調査から見えてきたのは、「婦人科に行けない/行かない構造」だ。
- 不調を感じる女性は約8割
- しかし「婦人科を受診する」と答えたのは2割強
- 多くは「市販薬でしのぐ」「我慢する」「有給で休む」にとどまる
その背景には、
- リテラシー不足 「生理痛は病気ではない」「婦人科に行っても大したことはしてもらえない」などの思い込み/男性側も「婦人科=妊娠?」というイメージを持つ人もまだいるなど、言い出しづらい雰囲気
- 通院負担の大きさ 都市部では待ち時間、地方ではそもそも婦人科の不足/半日がかりになり、仕事終わりや休日にも行きづらい
- 金銭負担 毎月数千円規模の自己負担は、優先順位を下げられがち
この三重苦の結果、「治療すれば改善するはずの不調」を長年我慢し続け、そのしわ寄せがプレゼンティーズムや離職となって現れている。
■講演要点② ルナルナオフィスのモデル ―企業と組んで「一歩目」を後押し
こうした状況を受け、ルナルナオフィスは企業と連携した“包括的な支援モデル”を構築している。柱は4つ。
- 実態把握(アセスメント) 社内アンケートにより、月経・妊活・更年期の不調度合いや生産性への影響を可視化
- リテラシー向上 医師によるリアルタイムウェビナー/動画教材・eラーニング、リーフレットなど/テーマは「女性の健康総論」「月経」「妊活・不妊」「更年期」「女性のがん」「男性更年期」など
- オンライン診療+治療支援 忙しい就労女性でも受診しやすいオンライン診療/ガイドラインに則り、漢方薬や一部サプリメント等を中心に処方/HRTなど対面が必須の治療は無理にオンライン化せず、適切に対面医療へつなぐ「中継点」として機能
- 効果検証と費用対効果の見える化 治療前後の症状・生活影響度・自己評価パフォーマンスを定量的に比較/それを人件費ベースで換算し、「投資としての健康施策」を提示
導入企業はすでに100社超。大企業では「健康経営」「D&I(ダイバーシティとインクルージョン)」、中堅企業では「採用・定着」「カルチャー変革」が主な目的となっている。利用率は、月経・更年期プログラム:女性従業員の10〜15%が一般的、その多くが「生活に支障があるレベル」の中程度~重度症状層。治療後は、「横になって休みたい/1日中寝込む」レベルの症状が大幅に減少、生産性自己評価も有意に改善」という結果が出ており、「3.4兆円」の一部を確実に縮小しうるポテンシャルが示された。同社のデータは、経産省の試算でも参照されている。
■講演要点③ 男性更年期・疑似体験も
―「職場全体の理解」をつくるフェーズへ
興味深かったのは、「女性だけのテーマ」で終わらせない工夫だ。 男性更年期プログラム(オンライン診療)および毛髪による男性ホルモン簡易検査/そこから睡眠時無呼吸症候群やメンタルヘルスなど、別の疾患への気づきにつながるケースも/EMS機器を使った「月経痛疑似体験」研修/男性が「仕事を休みたくなるレベルの痛み」を体験/女性同士でも「こんなに軽い/もっと痛い」の差を共有する機会に。
こうした体験を通じて、「なぜあの人は生理の時だけつらそうなのか」「更年期でキャリアを諦めざるを得ないのか」といった“見えないギャップ”を、職場全体で言語化・共有していく狙いがある。
■今後、Jウエルネスへの示唆
国レベルでも、
- 女性版骨太の方針
- 健康経営度調査での女性特有の健康項目
- 2025年の「骨太の方針」本体に、初めて女性特有の健康課題+男性更年期が明記
といった動きが加速している。
自治体でも、静岡県などフェムテック導入を支援するモデル事業、助成金制度が広がりつつある。講演の最後に平野氏は、「フェムテックが“流行語”で終わらず、企業・自治体・サービス事業者が強みを持ち寄る“連携産業”として根付いてほしい」と語った。企業が信頼の“媒介者”となり、女性が一歩目を踏み出しやすい環境をつくること。それは、まさにJウエルネスがめざす「職場を含むコミュニティ全体でのウエルネス」の実装でもある。


