【第48回 Jウエルネス研究セミナーレポート】「世界は“ウェルネス×ロンジビティ”へ──GWS2025ドバイ報告」

「第48回 Jウエルネス研究セミナーレポート】
「世界は“ウェルネス×ロンジビティ”へ──GWS2025ドバイ報告」
(講師:相馬順子氏/グローバル・ウェルネス・サミット ボードメンバー、コンセプトアジア代表取締役)
■ 概要
第48回Jウエルネス研究セミナーでは、グローバル・ウェルネス・サミット ボードメンバーの相馬順子氏を迎え、2025年にドバイで開催されたグローバル・ウェルネス・サミット(GWS)の最新動向について報告が行われた。
GWSは2007年に始まった国際会議で、世界116カ国から医師、投資家、研究者、企業経営者が集い、ウェルネス産業の方向性を議論する場である。今年のドバイ開催では、定員超過となるほど参加希望者が殺到し、ウェルネスが「一部の業界の話題」から「全産業を横断する基盤テーマ」へと進化している現状が強く印象づけられた。
■ 背景:ウェルネス産業は“成長産業”から“基幹産業”へ
相馬氏はまず、グローバル・ウェルネス・エコノミーの最新データを紹介した。
2024年時点で市場規模は6.8兆ドル(約1000兆円)に達し、2019年から2024年までの年平均成長率は6.2%と、世界GDP成長率を大きく上回っている。
この急成長の背景として、2007年のリーマンショック、そして新型コロナウイルス感染症という二つの大きな社会的転換点が挙げられた。
特にコロナ以降、「病気になってから治す医療」から「病気にならないための予防」「健康寿命の最大化」へと価値観が大きく転換し、医師や医療投資家がウェルネス領域へ本格的に参入してきているという。
■ 講演要点①:ロンジビティを支える新しいウェルネス像
今回のGWSで最も強調されたキーワードがロンジビティ(健康長寿)である。
登壇した米国の医師マイケル・ロイゼン氏は「寿命を延ばす議論は終わった。これからは“機能する時間”をいかに延ばすかだ。90代が40代のように生きる時代が現実味を帯びてきている」と語った。
相馬氏によれば、現在のロンジビティ論は単なるアンチエイジングではなく、
- 免疫・代謝・ホルモンバランスの最適化
- 腸内環境と栄養設計
- ストレスマネジメントとメンタルヘルス
- 孤立を防ぐ社会的つながり
といった生活全体の再設計を前提としている。
日本は世界有数の長寿国である一方、健康寿命と平均寿命の乖離が課題となっており、海外の参加者からも「日本の知見を体系化すべきだ」という声が多く聞かれたという。
■ 講演要点②:不動産・観光・スポーツへ広がるウェルネス
今回、特に注目を集めた分野がウェルネス不動産である。
2019年比243%成長という数字は、ウェルネスが「付加価値」ではなく「前提条件」になりつつあることを示している。
相馬氏は、海外では「ウェルネス要素を欠いた建物は、住民にも企業にも選ばれない」という意識が共有されていると説明した。
加えて、ウェルネスツーリズムは二極化が進み、治療・回復を目的とする滞在型だけでなく、観光・仕事・家族旅行にウェルネスを組み込むライト層が急増している。
また、スポーツ分野では個人の鍛錬よりも「仲間と参加する体験型スポーツ」が評価され、身体的健康と同時に社会的・精神的ウェルビーイングを高める装置として機能している点が印象的だったという。
■ 今後への示唆:Jウエルネスが果たす役割(編集部コメント)
GWS2025の報告から明らかになったのは、ウェルネスが産業の一分野ではなく、都市・経済・文化を支える横断軸になったという事実である。
日本は温泉、発酵文化、食、身体感覚、そして「養生」という思想を有しながら、それらを統合的に語る言語をまだ十分に持っていない。
- 温泉・運動・食・文化を統合した「生活リズム改善型ウェルネス」
- 富裕層・リピーターを惹きつける高付加価値ウェルネスツーリズム
- 医療・不動産・観光・地域をつなぐ共創モデル
Jウエルネスは、これらを単なる観光資源や健康施策としてではなく、生き方のモデルとして再編集し、世界に提示する役割を担うことができる。
相馬氏が語った「ウェルネスは形を変え続ける」という言葉は、経時変化に限らず、日本型ウェルネス(Jウエルネス)が固定概念を超えて進化する可能性も示唆しているように思える。
――以上。
(江渕)

