【JWM・NEWS】「若年女性のやせ」対策に「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)」を提唱
「若年女性のやせ」対策に「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)」を提唱
4月24日都内で「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)に関するプレスセミナー」が開催され、マイウェルボディ協議会(※)代表幹事の田村好史(順天堂大学大学院医科学科スポーツ医学・スポートロジー/代謝内分泌内科学教授)氏(写真)が、「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)」について解説した。同様の内容は前週に、日本肥満学会女性の低体重/低栄養症候群ワーキンググループ(WG)から厚生労働省記者クラブで発表された。女性の低体重や低栄養を新たな症候群「FUS(Female Underweight/Undernutrition Syndrome)」として位置づけ、診断基準や予防指針の整備に取り組むと発表。解決には個人の意識・行動だけでなく瘦身願望を生み出す社会構造へのアプローチが不可欠としている。
FUSの原因には「SNS、ファッション誌などメディアの影響」が大
FUSの概念をまとめた順天堂大学の田村氏は「FUSの定義は、低体重・低栄養の状態を背景としてそれを原因とした疾患・症状・徴候を合併している状態とし、肌質低下や冷え症といった自覚症状や低骨密度や月経周期異常といった疾患の根本原因である低体重・低栄養にアプローチすることが重要」とした。FUSの原因として「体質性痩せ」「社会的経済的要因・貧困による低栄養」に加え、「SNS、ファッション誌などのメディアの影響」を挙げた。「痩せたい」願望は、メディアによる影響や、両親や友人からの影響から形成されていき、小学生のころには芽生えているという。日本肥満学会の同WGは、「女性の低体重・日本において若年女性の低体重や低栄養がもたらす健康障害は個人の健康問題にとどまらず社会全体に影響を与える重要な課題であり、FUSはこれらの課題を包括的に整理し、体系的な診断や介入を促す基盤となることが期待される」としている。
今後の方向性として、ガイドライン策定、健診制度への組み込み、教育・産業界との連携、SIP(内閣府戦略的イノベーション創造プログラム)との連携を挙げる。10年後には、女性の60%がFUS健診を受け栄養不足や痩せの健康リスクに気づき行動することや、75%の児童がボディイメージについて学び、75%の人が「自分らしい美しさ」「多様な美」を理解し自己表現を楽しめることで、「痩せ=美しい」という単一の価値観を上書きし女性のウエルビーイングと社会全体の包摂性向上に貢献する社会実装を目指すという。
健康日本21(第3次)では若年女性のやせ15%以下、骨粗しょう症検診受診率15%へ
日本は先進国の中で最も「痩せた女性(BMI<18.5)」の割合が多く、2020年のデータでは米国の4倍、韓国の倍近い割合となっている。この傾向は、1980年頃から増加し、90年頃からは特に顕著になっている。一方、太った女性だけでなく、痩せた女性も糖尿病になりやすいというデータがある。痩せている若年女性は標準体重の方に比べ、筋肉量が少なく、食べない、運動しないといった「エネルギー低回転型」が多く、貧血症、摂食障害、骨減少症、月経不順、不妊、低出生体重児、将来は骨粗しょう症、骨折、フレイル、糖尿病などのリスクが危惧されてきた。昨年4月スタートした健康日本21(第3次)では、ライフコースアプローチを踏まえた健康づくりとして、飲酒や喫煙に加え、若年女性のやせ(BMI18.5未満)の割合を15%以下(現在20,2%)に減少させ、骨粗しょう症検診受診率は15%(現在5%)へ引き上げる目標が盛り込まれている。
※マイウェルボディ協議会・・・内閣府戦略的イノベーションプログラム(SIP)の一つで2024年3月に女性の生涯の健康に取り組む産学官チームとして設立された。若年女性の「やせ」状態の課題に取り組む。