【JWM・NEWS】別府発「新湯治・ウェルネス」始動──温泉の効能を“見える化”し、長期滞在型ツーリズムへ(大分県東京事務所観光PRイベント)
別府発「新湯治・ウェルネス」始動──温泉の効能を“見える化”し、長期滞在型ツーリズムへ(大分県東京事務所観光PRイベント 於 坐来大分)
大分県東京事務所は、「新湯治・ウェルネスツーリズム」をテーマとする観光PRイベントを坐来大分にて開催した。別府市による新湯治・ウェルネス取り組み紹介POLA社による美肌分析に関する講演、大分県フラッグショップ「坐来大分」櫻井政義料理長による温泉をテーマにした限定メニューが提供された。
「おんせん県おおいたを、エビデンスで語る」──大分県東京事務所所長 平川暢教氏

冒頭、平川暢教氏は「温泉は全国どこにでもある。だからこそ本日は、科学的アプローチによるエビデンス提示、そしてPOLA様によるプロの視点での深掘りを通じて“おんせん県おおいた”の良さを伝えたい」と述べた。さらに、会場で提供される料理についても「櫻井料理長が温泉をどう“食”で表現するかにも注目してほしい」と話し、温泉を入浴体験にとどめず、滞在価値として編み直す意図をにじませた。
講演①「新湯治・ウェルネス取組紹介」──別府市東京事務所所長 岡田菜穂氏 登壇した岡田菜穂氏は、別府市から東京に赴任して3年目になるとし、「外に出て初めて別府の温泉の凄さを実感している」と切り出した。
説明の中心は「新湯治」の定義だ。岡田氏は、湯治を「温泉地に長期滞在しながら入浴し、心身の健康を回復する療養」とした上で、「新湯治とは、湯治の効果・効能を“見える化”すること」と明言。別府には療養泉10種のうち7種の泉質があり、大分県内には8種があるという多様性を背景に、「体質と温泉の相性を明らかにする研究」を継続していると述べた。
研究例として、九州在住の健康な成人136名(18~65歳、慢性病なし)を対象に、別府温泉の5つの泉質で「7日間、毎日20分以上」の入浴を行った調査を紹介。結果の一部として、単純温泉に入浴した男性では「過敏性症候群の疾病リスクが入浴前から後で減少」、50歳未満の男性では5泉質のいずれかへの入浴で「痛風の疾病リスクが減少」する傾向が示された。女性でも、疾病リスクが10%以上減少した項目が複数見られ、炭酸水素塩泉では大腸がんや狭心症、うつ病など影響が大きい疾病が複数確認されたという。

また「新湯治・ウェルネス」の“ウェルネス”は、「自分の体や心が気持ちのよい状態」と定義。登山や自然散策、健康的な食、温泉蒸気で調理する食文化、座禅やエステ等まで含む幅広い概念として示し、「温泉効果の見える化」×「自然・食・体験」を掛け合わせた“パーソナライズなコンテンツ”を提供していくとした。
背景には観光課題もある。岡田氏は、別府観光は平均宿泊日数や観光消費単価が全国と比べて低い傾向にあるとし、「エビデンスに基づく入浴を1週間程度継続し、さまざまな体験を組み合わせることで、滞在と消費を伸ばしたい」と説明。欧州の温泉療養(保険適用の例)や海外の高額長期滞在型施設(例:フランスのヴィシー、スイスのヴァルス等)を引き合いに、「別府は多様な温泉に加え、旅館・ホテル・飲食・リラクゼーションなど都市機能が揃う稀有な温泉地」と優位性を語った。
一方で「別府に足りないもの」として挙げたのが、温泉効果のエビデンスデータを蓄積・分析し、施設間で共有し、高付加価値の旅を設計するための「研究実践拠点施設」構想だ。腸内細菌などのパーソナルデータ解析を行い、温泉・食・運動の助言を受けられる“コントロールセンター”機能を想定。扇山麓に自然と調和した形で整備するイメージ図も示した。
さらに産業化の鍵として「人材育成」を強調。令和7年3月に基本方針を策定し、3年程度で専門性を持つ人材を育成、拠点施設等の関連事業に従事してもらう想定だという。今年度は試行として、立命館アジア太平洋大学(APU)と連携したセミナーを5回開催し、定員30名に対し毎回50名程度が受講するなど関心の高さを示した。今後は履修制度やカリキュラムを含め制度設計を進めるとした。
講演②「大分・別府で美肌を楽しむ旅のご提案」――ポーラ美肌温泉認証の肌分析エビデンスから

続いて登壇したのは、株式会社POLAの湯本幸子氏。ポーラ・オルビスグループが進める「美肌温泉認証」の取り組みと、別府市と連携した美肌分析の成果が紹介された。湯本氏は冒頭、「ポーラ・オルビスグループは創業100周年となる2029年に向け、化粧品にとどまらない“ウェルネス領域”での価値提供を掲げている」と説明。その一環として、温泉がもたらす美肌作用を科学的に検証し、エビデンスとして提示する取り組みを進めていると語った。
背景には、温泉利用者の高い期待がある。ポーラの調査によると、温泉に期待する効果の上位は「疲労回復」「リラックス」「ストレス解消」だが、女性ではこれに並んで「美肌・保湿」への期待が高く、女性の約3人に2人が美肌効果を期待しているという。一方で、「肌への効果について十分な情報が提供されていない」という不満も多く、期待と情報提供のギャップが課題となっている。
この課題に応えるため、ポーラは自社の研究所が長年培ってきた肌科学の評価手法を応用し、温泉の美肌作用を分析。特徴的なのは、分析対象が「源泉」ではなく、実際に利用者の肌に触れる“浴槽のお湯”である点だ。浴槽湯を採取し、角層や皮脂への影響を中心に、4種の評価法を用いて解析することで、入浴による肌変化を可視化している。
分析結果は、ポーラ独自の「7つの美肌泉質」に分類される。別府市内で調査した13施設では、地域内に多様な美肌泉質が存在することが確認され、「一つの温泉地で、これだけ多くの美肌エビデンスが揃う例は全国的にも珍しい」と湯本氏は強調。特に別府温泉では、温泉により、肌のくすみ感をオフして、明るい印象にしていくことがデータから示されており、「美肌を目的にしたウェルネス旅」が具体的に描ける段階に来ているという。
また、湯本氏は「温泉の美肌作用は“ツルツル”“スベスベ”といった感覚的表現に留まりがちだったが、エビデンスを伴うことで、肌状態に応じた入浴提案や、湯上がり後のスキンケアまで含めた体験設計が可能になる」と述べた。実際、不要な皮脂を穏やかに除去する作用や、角層の状態を整えて潤い保持力を高める作用など、肌タイプや季節に応じた選択肢が提示できるようになっている。
最後に湯本氏は、「温泉は顔だけでなく全身で美肌作用を実感できる、非常にユニークなウェルネス資源」とした上で、「別府市と連携しながら、科学的根拠に基づいた情報発信を進め、日本の温泉地の価値向上に貢献していきたい」と締めくくった。

大分県フラッグショップ「坐来大分」櫻井政義料理長による温泉をテーマにした限定メニュー
取材メモ
今回の発表会で一貫していたのは、温泉を「気持ちいい」で終わらせず、効果を見える化し、体質に合わせて選べる仕組みへ転換する構想だ。多様な泉質・豊富な湯量・都市機能という別府の資源に、データ拠点と人材育成を組み合わせ、長期滞在型・高付加価値のウェルネスツーリズムを目指す。別府が“温泉地の次世代モデル”を掲げる理由が、具体的な工程として語られた場となった。

