【事例研究|002】伝統の技を通して自然や季節を感じ、先人の精神性に触れる

事例

「和える」は、日本料理で使われる言葉。食材を混ぜることだが、ミックスともブレンドとも違う。互いの魅力を引き出し、より魅力的なモノを生み出すこと。矢島氏は、伝統と現代を和えることで、日本人がもともと持っている精神性や細やかな感性を呼び覚ますのに役立つと考え創業した。矢島さんが取り組んだ最初の事業は「0歳からの伝統ブランドaeru」(写真)の展開。生まれて最初に出会う「お道具」や「身の回りのモノ」から、伝統の魅力を感じられる豊かな感性を育めるモノを職人さんと一緒に生み出していく。例えば、内側に「返し」が施された「こぼしにくい器シリーズ」は給食用に保育園や幼稚園で導入されている。素材や産地へ関心を持つきっかけになっているという。ほかにも、金継ぎ、銀継ぎという伝統の技法で壊れた陶磁器やガラスを直すことや、漆を塗り直す「aeru onaosshi(和えるお直し)」事業。また各地のホテルの一室で、その地域の伝統工芸職人の技を取り入れた空間造りをする「aeru room(和えるルーム)」事業。長崎、奈良、京都などで展開している。
(2022年6月29日第13回Jウエルネス研究セミナーより/(株)和える代表取締役 矢島里佳氏)

考察

Jウエルネスは、我々の中に生き続けてきた精神性や美意識、先人の智慧を現代の暮らしに生かしていくこと。矢島氏の「和える」の展開はある配信番組で知った。伝統の価値と現代の暮らしとを和えて新しい価値を生むという考えに共感し、すぐにコンタクトした。日本人のモノづくりへの「こだわり」や、使う人を喜ばせたいとと考える「おもてなしのモノづくり」の根っこは、こうした伝統の職人の中で培われてきたものだろう。矢島氏は「職人には、日本の気候や自然を感じ一体になっている」と話した。確かに、伝統のモノづくりには、自然の恵みの原料など自然環境や天候が及ぼす要因がいくつもある。職人は、今でも、そんな自然環境の変化を常に肌で感じながら暮らしているのかもしれない。こうした伝統工芸やその先に居る職人、歴史・文化の背景、自然環境を知ることで、発信すべき日本が見えてくる。