【Column】「Jウエルネス」が街や暮らしを変える|Ep.04

長寿・日本の自然、伝統文化、生活習慣に目を向ける

 19年秋、東京で開催した「日本のウエルネス(Jウエルネス)」がテーマの会議※1で、何人かの登壇者が日本のウエルネスが目指し発信すべきは「長寿」だと発言しました。そして健康的な食、入浴のライフスタイルや、温泉地、最先端のテクノロジーが今後ますます重要なコンテンツになると皆の意見が一致しました。日本の持っている新旧の様々な健康・美容資源や、伝統文化、生活習慣が現在の長寿の日本をつくったと再認識する貴重な場となったのです。
 日本文化を英語で伝えようとしたとき、どうしてもピッタリ合った言葉が見当たらず困った経験はありませんか。「いきがい」「おもてなし」「わび」「さび」「もったいない」「粋・通」などなど。これらの言葉には、日本にしかない日本語でしか言い表せない行動や心の動きがあるからではないでしょうか。この余白(隙間)こそが、日本らしさであり、Jウエルネスのヒントだと思います。また、日本には季節の移ろいを表現する伝統色が460以上(空色、浅葱色、藤色等々)もあるといいます。豊かな自然に育まれた豊かな感性。このことも、日本らしさの証に違いありません。
 暮らしぶりはどうでしょう。戦後から高度成長期の日本の社会や暮らしが描かれている漫画『サザエさん』には、日本の良き慣習や文化を垣間見ることができます。複数世代が一軒の中で生活し、居間は家族が触れ合う、軒先は近隣住民とのコミュニケーションの場でした。四季を感じる暮らしも間違いなくありました。
 マトリックス図(※下図「日本のウエルネスの魅力を知る」)の過去と現代のフェーズから、日本の伝統文化の中に多くの魅力が詰まっていることが分かります。例えば、日本の伝統文化としての茶道、華道、香道などの「~道」は「道を究める」という考えが貫かれ、その考えは、今スポーツ領域まで及んでいて、芸や技だけでなく内面や精神面の向上を目指す心技一体の考えが根付いています。
 また、生活習慣としての公衆衛生は日本のウエルネスの基盤と言えます。新型コロナ感染者数が他国に比べ少なかった理由に衛生面を挙げる専門家は多いでしょう。入浴文化はもちろん、湿気を呼ばない木造家屋、靴脱ぎ文化、床の拭き掃除等。現在は、公共スペース等の環境衛生技術や子供の歯磨き習慣の普及啓発方法を知りたいとアジア諸国から期待されているといいます※2。日本人の暮らしには、衛生意識がDNAのように受け継がれているのです。
 我々にとっては当たり前のこういった日本の姿、何気ない日常や景色、暮らし方や風習をもう一度見つめ直し、その良さや魅力を発見し、再認識することは、世界に発信する日本のウエルネスビジネスを生み出す上で、大切な作業だと考えています。

江渕 敦


※1:2019年Jウエルネスの会議『第11回スパ&ウエルネスシンポジウム』(UBMジャパン(株)、NPO法人日本スパ振興協会共催)『ウエルネスビジネスミーティング』(ダイエット&ビューティーフェア2019会場内、9月10日東京ビッグサイト)【登壇者】NPO法人日本スパ振興協会 岡田友悟、アマン 清野志、環境省 山本麻衣、(株)PDSアーキテクツー 浜田幸康、温泉ビューティ研究家 石井宏子、ヴィセラジャパン(株)武藤興子、琉球大学教授 荒川雅志【コーディネイト】UBM 江渕敦
※2:認定NPO法人バイオメディカルサイエンス研究会HPより ベトナムへの母子感染対策の協力事例