【JWM・NEWS】RNA共創コンソーシアム始動~花王・キリン・アイスタイルが語る「競争を超えた価値創造」
RNA共創コンソーシアム始動
花王・キリン・アイスタイルが語る「競争を超えた価値創造」
2026年1月15日

RNA共創コンソーシアム始動~花王・キリン・アイスタイルが語る「競争を超えた価値創造」 生活者の健康・美容をめぐる産業構造が大きく変わりつつあるなか、新たな共創の枠組みが動き出した。1月14日都内でRNA社会実装に向けたプレスカンファレスが都内で行われた。この日発表されたのは「RNA共創コンソーシアム」。業界の垣根を越え、企業同士が知見と視点を持ち寄ることで、次の価値創造を目指す取り組みだ。
「RNAは、変化する遺伝子である」──RNA共創プロジェクトリーダー庭野氏の問題提起
冒頭に登壇したのは、庭野 悠氏。花王株式会社 研究開発部門 スキンビューティ研究所 室長であり、RNA共創プロジェクトリーダーを務める人物だ。庭野氏はまず、花王がRNA研究に取り組む背景を、次のように語った。「DNAが“設計図”だとすれば、RNAは環境や年齢、生活習慣によって働き方を変える存在です。RNAは、“変化する遺伝子”だと私たちは捉えています」。花王は長年、皮膚や毛髪の研究を通じて「状態の違い」「揺らぎ」に向き合ってきた。RNAは、その揺らぎを捉えるための新しい手がかりであり、体質を固定的に分類するためのものではないという。RNA共創コンソーシアムは、こうした考え方を企業の枠を超えて共有し、生活者にとって意味のある形で社会実装することを目的として設立された。
花王・キリン・アイスタイル──三社代表が語る「共創」の意義
続いて行われた鼎談には、各社のトップが登壇した。長谷部 佳宏氏 花王株式会社 代表取締役 社長執行役員、磯崎 功典氏 キリンホールディングス株式会社 代表取締役会長 CEO、遠藤 宗氏 株式会社アイスタイル 代表取締役社長 兼 COOの各氏。
鼎談で共通して語られたのは、RNAを「自社の競争技術」として囲い込むのではなく、産業全体で共有すべき基盤知として捉えている点だった。研究・商品・情報発信という分業構造を越え、「生活者を中心に据え直す」ことが、結果として各社の強みを際立たせるという認識が共有された。
長谷部氏は、RNA研究を花王の中長期戦略の一部として位置づけつつ、「RNAの考え方は、選択に迷う生活者を支える“新しいものさし”になり得る」と語った。磯崎氏は、キリンが培ってきた健康・栄養領域の研究との接続可能性に触れ、「生活者の“今”を理解するための新しい視点としてRNAに期待している」と述べた。アイスタイルの遠藤氏は、「一社だけで完結するテーマではない」と強調し、「何を買ったらいいかわからないという化粧品迷子の方をRNAの取り組みによって救いたい」とした。
RNA肌タイプ傾向クラスター1とクラスター2
鼎談後、再び登壇した花王の庭野氏は、RNA研究の中核となる考え方として、クラスター1タイプ(以下C1)とスラスター2タイプ(C2)という整理を紹介した。肌内部の遺伝子機能の違いによって2つの肌タイプに分かれるという。C1は角層を分厚くして外の刺激から盾を厚くして守る防御メカニズム(角層バリア)を持っている。この角層が分厚くなり硬さやざらつきを感じやすくスキンケアが浸透しづらい。 一方C2は、免疫応答の関連する遺伝子が増えている。角層が薄いために角層で守れない分、免疫細胞で防御(免疫バリア)する。免疫過多により、スキンケアに対して感受性が高く炎症が起こりがちな肌になりがちという。この肌遺伝子モードは環境変化により約6割の人がモードを行き来して変化するため定期的に知ることが重要。また、新たに肌と頭皮には共通性があることが分かったという。
RNA共創コンソーシアムは、企業連携の新しいモデルを提示しようとしている。生活者の価値観が多様化し、健康・美容の意味そのものが問い直されるいま。同コンソーシアムの行方は、単なる企業連携を超え、業界全体の進化を占う試金石となりそうだ。
花王の事業実装──化粧品とヘアケアでの展開
第2部では、花王としての具体的な事業実装が発表された。化粧品事業では、SOFINAブランドから新シリーズを展開。長年蓄積してきた角層研究とRNA研究を融合し、「肌遺伝子モード」という新たな指標を提案する。生活者が自分の肌状態を理解し、その時点で最適なケアを選べることを目指す。ヘアケア事業では、「THE ANSWER PROGRAM」を通じ、頭皮と髪の“今”の状態を科学的に捉え、継続的に最適なケアを提案するサブスクリプション型サービスを構想している。いずれの取り組みにも共通するのは、一度きりの判断で終わらせない設計だ。RNAの可変性を前提に、変化に寄り添い続けることが、花王のRNA活用の核にある。
【解説コラム】Jウエルネスの視点から読む、RNA共創という試み
Jウエルネスでは、生活者を中心に、さまざまなサービスや製品がゆるやかに連携していくことの重要性を発信してきた。これまでの多くの健康・美容サービスは、送り手が正解をつくり、生活者はそれを受け取る立場にあった。効能や効果や推奨──選択は用意されていたが、主導権は必ずしも生活者側にはなかったように思う。ウェルネスへの転換は、この関係が静かに反転していくプロセス。生活者が自分の状態に気づき、その時々の自分に合った選択を重ねていく。企業やサービスは、その判断を支える伴走者になる。今回のRNA共創の取り組みを見ていて、そこに同じ構造を感じた。RNAは「こうしなさい」と指示するものではない。あくまで、選ぶためのヒントを渡す存在だ。ウェルネスとは、生活者が自分の身体や暮らしと対話できる環境を整えること。生活者主役へ。それはスローガンではなく、産業やサービスの設計思想そのものが変わる、静かな転換なのだと思う。


