【JWM・NEWS】人間性回復時代に向けて、静岡ウェルネスへの期待

人間性回復時代に向けて、静岡ウェルネスへの期待

前日熱海は50年振りの大雪でしたが、フォーラム当日は寒くも良い天気。かわいいメジロも見かけました

静岡県熱海で2月9日開催されたICOIフォーラム(※)にて、「健康×観光×地域のウエルネス資源」と題し、世界のウェルネス動向と日本、そして静岡・伊豆への期待について講演する機会をいただいた。温泉、スポーツ、観光、テクノロジーといった多様な立場の事業者が集う場で、あらためて「いま、ウェルネスをどうビジネスに活かしていけるのか」、そして「異業種が連携しどんなJウエルネスが生まれていくのか」を考える機会となった。

以下講演内容から一部紹介する。
世界のウェルネス市場は約6.8兆ドル規模に成長し、年率7〜9%で拡大している。特に近年は、メンタルウェルネス、ウェルネス不動産、ウェルネスツーリズムといった分野が成長を牽引している。その背景には、2001年の米国同時多発テロ以降、「より高く、より速く、より大きく」という価値観から、人生や健康、心のあり方を見直す方向へのパラダイムシフトがあったとされる。
一方で、ウェルネス産業はこれまで「健康の最適化」「長寿」「数値化」を強く追い求めてきた。その結果、効率やマネタイズが先行し、人間性や自然、社会性が置き去りにされてきたのではないか、という違和感も世界的に広がりつつある。私はこの動きを、2018年の世界温泉地会議(大分県別府市)で出会った言葉「ポスト・ウェルネス」と重ね合わせている。我々の「Jウエルネス」の起点になった言葉だ。
ポスト・ウェルネスの視点に立つと、日本がもともと持ってきた価値が、実は極めて本質的であることに気づく。温泉、森林浴、四季のある食文化、地域の暮らし。これらは特別な施設や高額なサービスではなく、生活の中で人間性を回復するための“装置”として機能してきた。しかし、あまりにも身近に存在していたがゆえに、それを新しい産業や価値として再編集する視点を持てなかったのではないだろうか。
日本が抱える健康課題を見ても、生活習慣病、若年女性の痩せすぎ、メンタルヘルスといった問題は、医療だけでは解決しきれない領域に広がっているように思う。ここにこそ、癒しにとどまらず、行動変容や予防につながるウェルネスの役割がある。
私は、ウェルネスを「未来の自分への投資」だと捉えている。ヘルスケアが主にコストとして扱われてきたのに対し、ウェルネスは生活者自身が主体的に選び、リターンを期待する投資である。だからこそ、本物であること、継続できること、人生の時間の質を高めるものであることが求められる。
この考え方を象徴するのが、「Jウエルネス」という視点だ。私は日本のウェルネスを一本の木(下図『Jウエルネスの樹』)に例えている。地中には「つながり」「生きがい」「おもてなし」「養生」という根があり、そこから歴史や文化、自然、温泉、水といった幹が育つ。さらにその上に、公衆衛生や医療、科学技術といった現代的価値が枝葉として広がっている。精神性と機能性、伝統と先端が共存していることこそ、日本の魅力であり強みである。
静岡・伊豆には、このJウエルネスを実装する条件が揃っている。豊かな自然と食、温泉資源、健康長寿の実践、研究拠点や企業集積、そして産業横断で挑戦しようとする人材と場がある。重要なのは、これらを点ではなく線や面として束ね、「静岡ウェルネス」として再編集し、発信していくことだ。
いま提供しているウェルネスは、人の未来にどんなリターンをもたらしているだろうか。希少性や感動、気づきにつながっているだろうか。Jウエルネスを考えることは、日本の知恵を現代に翻訳し直す試みでもある。この問いを、これからも現場とともに考え続けていきたい。
※ ICOIフォーラムは 令和4年に設立、ICOIプロジェクト(伊豆ヘルスケア温泉イノベーションプロジェクト)に取り組む法人・企業等のネットワークを構築し伊豆地域への事業展開を促進している。静岡県は全国でも有数の温泉地で源泉数は2000を超え、その9割以上が伊豆地域に分布している。この豊富な源泉を活用し食や運動を組み合わせた伊豆に適した新しいヘルスケア産業の創出を目指して静岡県は同プロジェクトを令和3年度スタートした。